《短篇集(日文版)》

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短篇集(日文版)- 第6部分


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恕ⅳ绚膜郡辘ⅳ文铯螄gをしなくなつて了ひました。
 丁度その頃の事でございませう。或夜、更(かう)が闌(た)けてから、私が独り御廊下を通りかゝりますと、あの猿の良秀がいきなりどこからか飛んで参りまして、私の袴の裾を頻りにひつぱるのでございます、確、もう梅の匂でも致しさうな、うすい月の光のさしてゐる、暖い夜でございましたが、其明りですかして見ますと、猿はまつ白な歯をむき出しながら、鼻の先へ皺をよせて、気が摺悉胜い肖辘摔堡咯fましく啼き立てゝゐるではございませんか。私は気味の悪いのが三分と、新しい袴をひつぱられる腹立たしさが七分とで、最初は猿を蹴放して、その儘通りすぎようかとも思ひましたが、又思ひ返して見ますと、前にこの猿を折檻して、若殿様の御不興を受けた侍(さむらひ)の例もございます。それに猿の振舞が、どうも唯事とは思はれません。そこでとう/\私も思ひ切つて、そのひつぱる方へ五六間歩くともなく歩いて参りました。
 すると御廊下が一曲り曲つて、夜目にもうす白い御池の水が枝ぶりのやさしい松の向うにひろ/″\と見渡せる、丁度そこ迄参つた時の事でございます。どこか近くの部屋の中で人の争つてゐるらしいけはひが、慌(あわたゞ)しく、又妙にひつそりと私の耳を茫筏蓼筏俊¥ⅳ郡辘悉嗓长馍à筏螅─染菠蓼攴丹膜啤⒃旅鳏辘趣忪(もや)ともつかないものゝ中で、魚の跳る音がする外は、話し声一つ聞えません。そこへこの物音でございますから。私は思はず立止つて、もし狼藉者(らうぜきもの)でゞもあつたなら、目にもの見せてくれようと、そつとその遣戸の外へ、息をひそめながら身をよせました。

       十三

 所が猿は私のやり方がまだるかつたのでございませう。良秀はさもさももどかしさうに、二三度私の足のまはりを駈けまはつたと思ひますと、まるで咽(のど)を絞められたやうな声で啼きながら、いきなり私の肩のあたりへ一足飛に飛び上りました。私は思はず頸(うなじ)を反らせて、その爪にかけられまいとする、猿は又水干(すゐかん)の袖にかじりついて、私の体から辷(すべ)り落ちまいとする、――その拍子に、私はわれ知らず二足三足よろめいて、その遣り戸へ後ざまに、したゝか私の体を打ちつけました。かうなつてはもう一刻も躊躇してゐる場合ではございません。私は矢庭に遣り戸を開け放して、月明りのとどかない奥の方へ跳りこまうと致しました。が、その時私の眼を遮(さへぎ)つたものは――いや、それよりももつと私は、同時にその部屋の中から、弾かれたやうに駈け出さうとした女の方に驚かされました。女は出合頭に危く私に衝き当らうとして、その儘外へ転び出ましたが、何故(なぜ)かそこへ膝をついて、息を切らしながら私の顔を、何か恐ろしいものでも見るやうに、戦(をのゝ)き/\見上げてゐるのでございます。
 それが良秀の娘だつたことは、何もわざ/\申し上げるまでもございますまい。が、その晩のあの女は、まるで人間が摺膜郡浃Δ恕⑸àい埽─人饯窝郅擞长辘蓼筏俊Q郅洗螭gやいて居ります。睿Г獬啶激à凭婴辘蓼筏郡椁Α¥饯长丐筏嗓堡胜窑欷垦Fや袿(うちぎ)が、何時もの幼さとは打つて変つた艶(なまめか)しささへも添へてをります。これが実際あの弱々しい、何事にも控へ目勝な良秀の娘でございませうか。――私は遣り戸に身を支へて、この月明りの中にゐる美しい娘の姿を眺めながら、慌しく遠のいて行くもう一人の足音を、指させるものゝやうに指さして、誰ですと静に眼で尋ねました。
 すると娘は唇を噛みながら、黙つて首をふりました。その容子が如何にも亦、口惜(くや)しさうなのでございます。
 そこで私は身をかゞめながら、娘の耳へ口をつけるやうにして、今度は「誰です」と小声で尋ねました。が、娘はやはり首を振つたばかりで、何とも返事を致しません。いや、それと同時に長い睫毛(まつげ)の先へ、涙を一ぱいためながら、前よりも緊(かた)く唇を噛みしめてゐるのでございます。
 性得(しやうとく)愚(おろか)な私には、分りすぎてゐる程分つてゐる事の外は、生憎(あいにく)何一つ呑みこめません。でございますから、私は言(ことば)のかけやうも知らないで、暫くは唯、娘の胸の動悸に耳を澄ませるやうな心もちで、ぢつとそこに立ちすくんで居りました。尤もこれは一つには、何故かこの上問ひ訊(たゞ)すのが悪いやうな、気咎めが致したからでもございます。――
 それがどの位続いたか、わかりません。が、やがて明け放した遣り戸を椋Г筏胜樯伽筏仙蠚荬瓮剩à担─幛郡椁筏つ铯畏饯蛞姺丹膜啤ⅰ袱猡Σ芩兢赜鶐ⅳ辘胜丹ぁ工瘸隼搐胝嗓浃丹筏辘筏蓼筏俊¥丹Δ筏扑饯庾苑证胜椤⒑韦姢皮悉胜椁胜い猡韦蛞姢郡浃Δ省⒉话菠市膜猡沥嗣{されて、誰にともなく恥しい思ひをしながら、そつと元来た方へ歩き出しました。所が十歩と歩かない中に、誰か又私の袴の裾を、後から恐る/\、引き止めるではございませんか。私は驚いて、振り向きました。あなた方はそれが何だつたと思召します?
 見るとそれは私の足もとにあの猿の良秀が、人間のやうに両手をついて、黄金の鈴を鳴しながら、何度となく丁寧に頭を下げてゐるのでございました。

       十四

 するとその晩の出来事があつてから、半月ばかり後の事でございます。或日良秀は突然御邸へ参りまして、大殿様へ直(ぢき)の御眼通りを願ひました。卑しい身分のものでございますが、日頃から格別御意に入つてゐたからでございませう。誰にでも容易に御会ひになつた事のない大殿様が、その日も快く御承知になつて、早速御前近くへ御召しになりました。あの男は例の通り、香染めの狩衣に萎(な)えた烏帽子を頂いて、何時もよりは一層気むづかしさうな顔をしながら、恭しく御前へ平伏致しましたが、やがて嗄(しはが)れた声で申しますには
「兼ね/″\御云ひつけになりました地獄変の屏風でございますが、私も日夜に丹栅虺椋à踏─螭扦啤⒐Pを執りました甲斐が見えまして、もはやあらましは出来上つたのも同前でございまする。」
「それは目出度い。予も満足ぢや。」
 しかしかう仰有(おつしや)る大殿様の御声には、何故(なぜ)か妙に力の無い、張合のぬけた所がございました。
「いえ、それが一向目出度くはござりませぬ。」良秀は、稍腹立しさうな容子で、ぢつと眼を伏せながら、「あらましは出来上りましたが、唯一つ、今以て私には描けぬ所がございまする。」
「なに、描けぬ所がある?」
「さやうでございまする。私は総じて、見たものでなければ描けませぬ。よし描けても、得心が参りませぬ。それでは描けぬも同じ事でございませぬか。」
 これを御聞きになると、大殿様の御顔には、嘲るやうな御微笑が浮びました。
「では地獄変の屏風を描かうとすれば、地獄を見なければなるまいな。」
「さやうでござりまする。が、私は先年大火事がございました時に、炎熱地獄の猛火(まうくわ)にもまがふ火の手を、眼のあたりに眺めました。「よぢり不動」の火焔を描きましたのも、実はあの火事に遇つたからでございまする。御前もあの剑嫌兄扦搐钉い蓼护Α!
「しかし罪人はどうぢや。獄卒は見た事があるまいな。」大殿様はまるで良秀の申す事が御耳にはいらなかつたやうな御容子で、かう畳みかけて御尋ねになりました。
「私は鉄(くろがね)の鎖(くさり)に俊àい蓼筏幔─椁欷郡猡韦蛞姢渴陇搐钉い蓼工搿9著Bに悩まされるものゝ姿も、具(つぶさ)に写しとりました。されば罪人の呵責(かしやく)に苦しむ様も知らぬと申されませぬ。又獄卒は――」と云つて、良秀は気味の悪い苦笑を洩しながら、「又獄卒は、夢現(ゆめうつゝ)に何度となく、私の眼に映りました。或は牛頭(ごづ)、或は馬頭(めづ)、或は三面六臂(さんめんろつぴ)の鬼の形が、音のせぬ手を拍き、声の出ぬ口を開いて、私を虐(さいな)みに参りますのは、殆ど毎日毎夜のことと申してもよろしうございませう。――私の描かうとして描けぬのは、そのやうなものではございませぬ。」
 それには大殿様も、流石に御驚きになつたでございませう。暫くは唯苛立(いらだ)たしさうに、良秀の顔を睨めて御出になりましたが、やがて眉を険しく御動かしになりながら、
「では何が描けぬと申すのぢや。」と打捨るやうに仰有いました。

       十五

「私は屏風の唯中に、檳榔毛(びらうげ)の車が一輛空から落ちて来る所を描かうと思つて居りまする。」良秀はかう云つて、始めて鋭く大殿様の御顔を眺めました。あの男は画の事と云ふと、気摺彝瑯敜摔胜毪趣下劋い凭婴辘蓼筏郡ⅳ饯螘rの眼のくばりには確にさやうな恐ろしさがあつたやうでございます。
「その車の中には、一人のあでやかな上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1…91…26)

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